牧師室より

数年前の春の教会バザーで、実家の庭先に植えようと思い苗を購入した。苗のラベルには「クリスマス・ローズ」とあり、半日陰の少し空いたスペースに、ちょうど良いかと思ったのだ。苗は根付き、青々とした葉がよく茂ったのだが、ずっと花が咲かなかった。先週、実家に行くと、見事な紫の花がいくつも咲いていた。クリスマス・ローズではなく、レンテン・ローズだったということがわかった。どちらも植物分類上はキンポウゲ科ヘレボルス属というグループに属する植物で、たくさんの園芸品種があるが、クリスマス・ローズ(学名ヘレボルス・ニゲル)はクリスマスの頃に咲き、レンテン・ローズ(ヘレボルス・オリエンタリス)は、「レントの薔薇」という名のとおり、レントの頃に咲く。ヘレボルス属を日本語で「クリスマスローズ属」と呼んだりするので、どちらも「クリスマス・ローズ」の名で園芸店では売られていたりする。今年、実家の庭で「灰の水曜日」の頃に開花したレンテン・ローズは、イースターまで咲き続けそうだ。

 レントにちなんだ花は他にもいくつかある。西洋ではラッパズイセンのことをレント・リリーと呼ぶことがある。これも開花時期がちょうどレントの頃だからであろう。他にも、トケイソウは、英語でパッション・フラワー(Passion flower)だが、これは「キリスト受難の花」という意味だ。そう呼び出したのはイエズス会らしいが、雌しべを十字架に見立て、その上の枝分かれした柱頭を十字架の釘、その外側を取り巻くキザキザの部分を茨の冠、巻きヒゲは鞭などに見立てたらしい。

           (中沢麻貴)