牧師室より

路上生活を余儀なくしている人たちにオニギリを配る活動に参加した30代の独身女性が、活動後にご飯を一緒に食べた仲間に、お酒の勢いもあってもらした言葉。「オニギリまで貰うなんて」「ちょっと甘えてるっていうか…」「もうちょっと自分でなんとかすればっていうか…」。そして彼女は、叫んだそうだ。「だって、私、死ぬほどキツい中仕事してんのに、誰も私にオニギリなんかくれないんですよ!」フリーランスで仕事をしている彼女は、日々職場で「死ねよババア」なんていう暴言を浴びながら我慢して働いている。休んだりしたら即職を失うので、もうギリギリの状態でしがみつくようにして仕事を得ている。彼女の「魂の叫び」の聞き役は、作家の雨宮処凛氏だ。「マガジン9」というウェブマガジンの記事に紹介されている。そして、「誰も私にオニギリなんかくれない!」という叫びに、爆笑しつつも深く共感するものを感じる彼女自身も、フリーランス独身女性だ。雨宮氏は、路上生活者は、死と隣り合わせでなんとか生きのびているのだから、決して甘えてなんかいない、としつつも、「何がおかしくて何がおかしくないかもわからないまま、すべてが少しずつ狂っているような世界。そんな中で、『他者や弱者への優しさを持て』なんていう方が無理なのかもしれない」と、戦慄する。それでも、差別や貧困バッシングにあらがう現場に、仲間と共に立つのはなぜか。「現場でも感じるのは、『人を生きさせない』システムに対する静かな怒りだ。ホームレスだから、障害者だから、貧乏だから。そんな理由で堂々と差別がまかり通り、尊厳を踏みにじってくるような政治や大きな力や行政の人々の態度や、そして人々の中に刷り込まれた差別意識への憤り。それは突き詰めていくと、『自分がそうされたら嫌だから』という一点に尽きる」。雨宮氏の、この視点を忘れないようにしたい。  (中沢麻貴)