牧師室より

いつの間にかセミの声が止んで、日も暮れると、草むらから虫の音が響くころとなりました。

聖書の世界には、虫の音は響いていたのでしょうか。少し調べてみました。出エジプト記に、モーセがイスラエルの民を荒れ野に連れ出すための交渉を、エジプト王ファラオとの間で行う過程で、神様の力を示す災いとして、イナゴの大群が呼び集められ、エジプト全土の緑が食い尽くされたとあるのは有名です。イナゴは、いわゆるバッタの仲間で、生物分類上では昆虫の中の直翅目(ちょくしもく。あるいはバッタ目)というグループに分類されます。コオロギ、スズムシ、キリギリスなど、日本では虫の音を奏でることで知られるもの達は、このグループに属します。バッタは世界中に広く分布していますが、エルサレムには、どうやらコオロギのたぐいが分布していて、これは日本と同様、鳴くようです。ヘブライ語でバッタを意味する単語は、聖書の中にも10以上あります。作物を食害するイナゴについては、幼虫、成虫など生育段階ごとに呼び名が異なっていたりして、関心の高さを感じます。でも、それ以外の単語が、どういう種類のバッタを意味するのかは、よくわかっていません。レビ記の律法には、食べてよい昆虫として、「いなごの類、羽ながいなごの類、大いなごの類、小いなごの類」(新共同訳レビ1122)とあります。この三番目の「大いなご」は、ハルゴルという単語で、これはコオロギのことだという説があります。聖書の世界の人々は、音より味で秋を楽しんでいたのかもしれませんね。        (中沢麻貴)