牧師室より

本日は参議院議員選挙の日。

 ずいぶん前になるが、「学校に行こう!」というテレビ番組があったが、「選挙に行こう!」と呼びかけたい。

 愛読雑誌『世界』7月号の特集は「非立憲政治を終わらせるために−2016選挙の争点」となっている。すでに各メディアが伝えているように、参議院で改憲勢力(改憲派4党)が3分の2を占めたなら、そのまま改憲へと突き進む可能性が極めて高いため、このような特集が組まれたのだろう。

以前紹介したことがある「自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs)」に参加している山本雅昭氏が、『世界』7月号に寄稿しているが、彼の体験談が興味深い。彼は学業から離れて、しばらく米国アイオワ州で寿司屋のマネージャーをしていたという。以下紹介する。

民主党バーニー・サンダースを支持する缶バッチを付けた客が寿司屋に入ってきた時、メキシカンの店員がメニューを渡しながら、「バーニーを支持しているの?」と聞くと、「ええ、そうよ。1%の富裕層じゃなくて、私たち99%の中間層のことを彼は見てくれているからね」と客が応じた。すると店員は「そうなのね。でも、彼の政策は非現実的だわ」と意見を述べたという。そこから議論が始まり、「お客さんと店員の政治の議論」に山本氏は圧倒されたそうだ。相手を「論破してやろう」という、日本で良く見られる風景もなく、店員の側が「勉強になったわ、ありがとう」と感謝の意を伝えて、この議論は終わったとある。

これが日本の店ならどうだろうか。店の責任者が飛んできて、客に非礼を詫び、店員を叱って、注文を取るように命じるのかもしれない。ある米国人が山本氏に、「ある意味では選挙って、教育の場なんだよね」と感想を述べたそうだ。日本の地にいると、「米国のどこが民主主義なんだ」と憤りを感じる場面も多いのだが、山本氏が体験したような話を見聞きすると、米国にも学ぶべき点があることを知らされる。

教会も含めて日本の社会は、日常の場で政治を語ることを避けているように思う。自分の考えを相手に知られることを恐れたり、対立を避けたいという配慮が働くからかもしれない。しかしそういう「配慮」こそが、民主主義から私たちを遠ざけているのではないだろうか。

戦前の礼拝には、特高警察が入り込んでいたと聞く。私の先輩の教会では、公安警察が礼拝に「出席」しているそうだ。政治の問題は、今日においても、信仰の問題と直結していると言える。 

  (中沢譲)