牧師室より

1963828日、ワシントンDCのリンカーン記念堂前で、ある人物が演説をしていた。その演説の終盤、アフリカ系アメリカ人の女性ゴスペル歌手が叫んだ。「あなたの夢のことを話して、マーティン」。そこで演説者は、あらかじめ用意していた演説を止め、彼の「夢」を語り始めた。そう、「私には夢がある」(I have a dream)という、あの有名な演説である。演説者はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師。

 彼は17分の演説をこう締めくくっている。「自由の鐘を鳴り響かせよう」「あらゆる町から自由の鐘を 鳴り響かせる時、われわれは神の子すべてが、黒人も白人も、ユダヤ教徒もユダヤ教徒以外も、プロテスタントもカトリック教徒も、共に手をとり合って、なつかしい黒人霊歌を歌うことのできる日の到来を早めることができるだろう。『ついに自由になった!ついに自由になった!全能の神に感謝する。われわれはつい に自由になったのだ!』」(米国日本大使館訳)

キング牧師は凶弾に斃(たお)れたが、彼の夢は多くの人々の夢となり、その夢は未来に託された。

 今から36年前、横浜港南台教会が誕生した。その誕生の際には、多くの人たちの夢、希望、そして祈りがあった。そしてそれは形となった。ゆえに私たちは、この教会の誕生に尽力した人たちの夢を託されていると言える。

キング牧師は「私には夢がある」というフレーズを8回繰り返したが、その最後のフレーズはこうであった。

「私には夢がある。それは、いつの日か、あらゆる谷が高められ、あらゆる丘と山は低められ、でこぼこした所は平らにならされ、曲がった道がまっすぐにされ、そして神の栄光が啓示され、生きとし生けるものがその栄光を共に見ることになるという夢である」と(米国日本大使館訳、参照 イザヤ40:4-5

 そう、これは捕囚の民に希望を告げた第2イザヤの言葉であり、洗礼者ヨハネが、メシアの到来を告げ知らせたメッセージでもある。つまり、この地上に神の正義が実現するという希望の言葉であり、同時に神の国の到来を告げ知らせるメッセージでもあるのだ。私たちの教会もまた、この希望と福音に連なりたい。

今日は教会の誕生日。神様はチャペルコンサートという誕生日プレゼントを届けてくださった。共に感謝したい。        (中沢譲)