牧師室より

「故に私は本日、信念を持って表明する。米国は、核兵器のない世界の平和と安全を追求するのだと。私は、甘い考えを持ってはいない。この目標は、直ちに達成される訳ではない。恐らく、私の生きている間は無理であろう。この目標を達成するには、根気と忍耐が必要である。だが我々は今、世界は変わり得ないという声を気にしてはならない。『我々はできる (Yes, we can)』と主張せねばならないのである」。これは、バラク・オバマ大統領が200945日にプラハで行った演説である(ウィキソース日本語版)。この演説によりオバマ大統領は同年109日にノーベル平和賞を受賞した。

 そしてオバマ大統領は、2016527日、現職米国大統領として初めて被爆地広島を訪問し、その声明において、「私たちは…声なき叫び声に耳を傾けます」「私たちは…これまでの戦争、これからの戦争の犠牲者に思いをはせます。そして歴史を真っ向から見据えなくてはなりません」(産経ウェブ版527日)と発言した。また被爆者代表とも握手し語りあった。だが、肝心な部分を「私たちは」と表現することで、普遍的な平和宣言になってしまい、謝罪にはならなかった。また言及はあったが、韓国人慰霊碑を訪ねなかったことなど、不十分であった。 

日本国内でも賛否両論があったが、米国内での反対の声も強く、民主党寄りと思われる米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』にも、「保守派だけでなく、多くの有権者の怒りを買うことになる」(日本版5月号)とあった。そうした点に鑑みて、今回の演説は、現役の米国大統領ができる、ぎりぎりの声明であったと言える。

心に響いたのは、プラハ演説の次の言葉である。「世界は変わり得ないという声を気にしてはならない」という言葉だ。沖縄の米軍基地完全撤去への思いを強くした。     (中沢譲)