牧師室より

 414日、国連児童基金(ユニセフ)が、『子どもたちのための公平性:先進諸国における子どもたちの幸福度の格差に関する順位表』を発表した。朝日新聞もこのレポートを「子どもの貧困格差、日本は先進41カ国中34位」(2016414日)という見出しで報じている。

 このレポートの日本語版の翻訳を担当した阿部彩氏(首都大学東京 子ども・若者貧困研究センター長)が、解説でこのように述べている。

 「『格差』と言うと、多くの人々は、裕福な子どもとそうでない子の差を連想するでしょう。例えば、一方で、幼少期から塾や習い事に行き、休みごとに海外へ家族旅行に出かける子どもがおり、一方で、そのようなものに縁がない子どもがいる。これも『格差』です。しかし本レポートの主眼は、このような階層の上半分ではなく、下半分の格差です」と。

OECD(経済協力開発機構)とユニセフが発表しているデータは、算出の仕方が多少異なるものの、いずれも各国の平均層と「底辺」層との比較で「貧困」層を算出している(相対的貧困の算出)。

つまり「日本は先進41カ国中34位」という数字は、日本社会の平均的収入のある家庭の子と、貧困家庭の子との格差が著しく拡大しているということを意味する。

ちなみに、日本より貧困度の高いのは、東欧の一部、メキシコ、ギリシャ、イタリア、スペイン、イスラエル。格差社会として知られるアメリカは、日本より低い結果になっている。

「上半分」ではなく、「下半分」において大きな格差があるということ、つまり貧困の度合いが高いということは、日常生活において必要なものが不足しているだけでなく、学力、健康、精神面での影響も高くなる。義務教育より上の進学は望めず、未来に希望が持てず、食生活も十分でないため、心身ともに荒廃してしまう可能性があるからだ。地域格差もあるようだが、日本で生活する子どもの56人に1人が、未来に希望が持てないような貧困の中にあることが、この間のマスコミ報道でも明らかになっている。本来ならば、これは政治の問題であるはずなのだが、政治家は、「平均」的収入以上の人たちへのケアにしか関心がなく、本当に必要な福祉は、むしろ切り捨てられつつあるように感じている。

私たちは、どのような未来を子どもたちに託すことができるのか、今、正念場に立たされている。

 (中沢譲)