牧師室より

今日は、「棕櫚の主日」です。英語では、パーム・サンデーPalm Sunday。私事ですが、元生物教師としては、この主日の呼び名は、実に悩ましいのです。英名パームは、和名ナツメヤシという植物で、シュロとは別の植物です。また、カトリック教会やルーテル教会では、「枝の主日」ともいいます。ここでも悩ましいのは、ナツメヤシやシュロなど、ヤシ科植物の葉の、軸のように見える部分は、植物学的には「枝」ではありません。つまり、幹と葉をつなぐ茎の一部ではなく、「葉柄」という葉の一部で葉脈の一番太い部分なのです。一枚の葉が、細かく裂け目を生じて鳥の羽のような形状になっているのです。どうでもよいと思われる方も多いことでしょうし、そのとおりなのですが、でも、心の片隅がムズムズしてしまうのです。聖書が最初に邦訳された当時、ヤシ科の植物で、生育した姿が日本で広く知られていたのはシュロだけだったので、棕櫚と訳されたようです。シュロは九州には自生しているらしいですが、今や東北地方まで、野生化したシュロが山野に多く見られるようになりました。鳥が実を食べて種子が散布され、分布が広がったようです。温暖化も一因らしいです。

 北欧の国々では、ヤシ科植物が自生しないので、この主日を飾るのはネコヤナギの枝だと聞いたことがあります。ならば、日本ではシュロでいいのかもしれません。いつの間にか分布を広げたシュロのように、福音も広がりますように。(中沢麻貴)