牧師室より

新しい年が明けました。

私は、両親ともにクリスチャンの家で子ども時代を過ごしたので、お正月とは、クリスマスの祝祭に関わる準備と片づけの後にやってくる静かな、でも家族全員がちょっとくたびれた状態で迎える時間として印象付けられています。ですから白状しますと、「一年の計は元旦にあり」というような、背筋の伸びた年の初めは、なかなか自発的には迎えられずに今に至ります。せめて、御子の誕生を祝い、礼拝をささげた後に、喜びにあふれて各々の日常生活の中へと戻って行った羊飼いたちや東方の学者たちをイメージし、心根を彼らと同期させ、クリスマスの喜びを胸に元気良く一年を始めましょうと、自分を仕向けている次第です。

ところで、少し調べものをしていて、今年はニーチェが没した年齢に自分が達することに気づきました。ヨーロッパ文明の中で形成されたキリスト教的道徳概念への批判が記されている著書『道徳の系譜』は、私にはとても面白く、ニーチェに影響を受けたとされるフランツ・カフカの小説も好きで、これもニーチェに触発された研究のあるミシェル・フーコーの思想にも、わからないなりに興味をもっています。系譜学というのは、一般的には家系図をたどって遺伝的つながりを探るような研究ですが、ニーチェは道徳とか倫理観というものが、どんなふうに形成されてきたのかを、藪の中でイモヅルをたどるように手繰っていきました。

 クリスマスに教会の扉に掲げられたリースの土台は、ある方が山の中で手繰り寄せて提供してくださったフジヅルでした。今年は、平和への手がかりを注意深く手繰り寄せ、なるべく丈夫に編み上げる年にしたいものです。聖書では、イエス・キリストから過去へさかのぼって、旧約時代の証しを手繰り寄せ、そこに神の御心を見出しています。もって範としたいものです。

   (中沢麻貴)