牧師室より

子どもの頃通っていた教会には、「家庭クリスマス」という習慣がありました。クリスマス礼拝のあった日曜日の夜に、教会員の家庭で、それぞれクリスマスを祝う会を開く習慣を教会が後押ししたのです。教会がまだ小さかった頃、牧師も役員さんたちも若く、やがて何人かが結婚して、いくつかの「クリスチャン家庭」ができたとき、クリスマスには、ぜひ自分たちの家庭に教会の若い人たちや独り住まいの人たちを招いて、一緒にクリスマスを祝おうということになったのがきっかけのようです。自分たちが独身で教会生活をおくっていた期間に、牧師館や年配の教会員さんの家庭で、ご飯をご馳走になったり、悩みを聞いてもらったり、温かくしてもらったことを思い、その温かさを今度は自分たちが誰かと分かち合おうと意気込んだということのようです。牧師館には、その年に受洗した人が招かれました。受洗当時中学生だった私も、クリスマスの夜に牧師館で、牧師が握ったお寿司をごちそうになったのを覚えています。人を招く名乗りを挙げた家庭の人たちは、事前に打ち合わせ会をして、教会がリストアップした招待者を一人から数人、手分けして自分の家に招待しました。クリスマスの夜、よかったらわが家へいらっしゃいませんか、一緒にお祝いしましょう、と手紙を出すわけです。招かれた人たちには、教会からもお知らせがいきました。家庭クリスマスに招待されたら、なるべくお訪ねしてください。一緒に誘われているのは、誰々さんです、と。招く側は華美にならないように心掛け、招かれる側も、手土産などは、しないか、しても皆で出し合って一つだけ、などと気を付けました。クリスマスの喜びを素朴に分かち合う一つの形でした。

やがて時代は変わり、共働きの家庭も増え、そうしたのんびりした習慣は維持するのが難しくなりました。でも、年ごとに様々な人がわが家を訪れ、一緒に祝ったクリスマスは、忘れがたい思い出です。(中沢麻貴)