牧師室より

遠方や多忙の友人たちと交流するためにネット上のfacebookを利用している(以後紙幅節約のためfbと略す)。アフリカや中東やオセアニアにいる友や、昼夜逆転生活の友とも話ができるのは嬉しい。fbでは、自分の印としてプロフィール写真を使用する。私の最近のプロフ写真は、NO WAR‼のプラカードを振る黒猫だ。

13日のパリ同時多発攻撃以後、fbのプロフ写真を、仏国旗の色に染める設定ができるようになった。「パリ市民の安全と平和を願う設定にしよう」という呼びかけがあったらしい。多くの人がこれに応じた。けれども、私の生物クラスの生徒で後に歴史の専門家となり今は子育て中の友人は、自分のページにこう書く。「ベイルート、アンカラ、シリアでも多くの命が奪われている。祈りの対象はパリだけではない。パリに限定してはいけない。それを覚える意味で、私はプロフィールの写真をトリコロールにはしないつもりだ」。これに応えて、つい数か月前まで中東で生活していた友人が書く。「シリア人の友人が、“シリアのためにも祈って‼”って投稿していて、ハッとしたよ」。そう、だから私たちは、平和を祈るけれど、自分の写真をトリコロールだけでなく、どこの国旗の色にも染めることはしない。

あの日劇場で妻を亡くしたパリ在住の男性は、fbにこう書いた。「あなたたちは私に憎しみを抱かせることはできません。13日の夜、あなたたちは特別な人の命を奪いました。私が生涯をかけて愛する人であり、私の息子の母親です。しかしあなたたちは私に憎しみを抱かせることはできません。私はあなたたちが何者かを知らないし、知りたいとも思いません。あなたたちは魂を失った人間です。彼のためには殺人をもいとわないほどにあなたたちが敬っている神が自分の姿に似せて人間を創造したのだとしたら、私の妻の体に打ち込まれた全ての銃弾は、彼の心を傷つけたでしょう。私はあなたたちの願い通りに憎しみを抱いたりはしません。憎悪に怒りで応じれば、今のあなたたちのように無知の犠牲者になるだけです(以下略)」。

昨年9月米国とNATOが合意して以後シリアでの空爆は増加。今年、仏国と露国も参加。在米民間団体運営の病院が空爆で被害。シナイ半島で露国旅客機墜落。ベイルートで同時多発自爆。そしてパリでの出来事。 (中沢麻貴)