牧師室より

『戦時下のキリスト教』(教文館)という本が出版された。昨年9月に同志社大学で行われた、キリスト教史学会でのシンポジウムの記録である。第二次世界大戦下、日本のキリスト教界が置かれていた状況に関する貴重な報告集となっている。本の帯にはこう書かれている。「1939年の宗教団体法公布に始まる国家の宗教統制は、日本のキリスト教全体を大きく揺さぶった。合同教会の日本基督教団が成立する一方、諸教派の分裂や教会・個人への弾圧も生じた。混迷を極める戦時体制下の諸動向をめぐり、日本基督教団・カトリック・正教会・聖公会・ホーリネスが初めて一堂に会して論じる」と。

 会員の近藤喜重郎兄も、「正教会」(日本ハリストス正教会教団)の項で報告されている。戦時下の正教会の様子を興味深く読ませて頂いた。

 奇しくも今年は戦後70年の年。キリスト教界のみならず、憲法学界においても、先の大戦の反省から、日本が70年間も戦争を行わなかった事を記念すべき年であったはずだ。しかし同書のあとがきで、岡部一興氏(キリスト教史学会理事)はこう述べている。「今日の社会を見ると、平和に関して憂慮すべき問題が浮上してきています。国民の意見を聴こうとせず、圧倒的な力を持つ与党が……戦時下のキリスト教を考えることは意義あることと思います」と。状況はすでに戦後ではなく、戦前的事態に立ち至っていると言えるのかもしれない。同書を読んでいて、日本のキリスト教界は、今こそ歴史から学ぶ必要があることを強く感じた。

 なお、「日本基督教団」の項は、『日本基督教団史資料集』の編纂にも携わった戒能信生牧師が報告している。近藤兄が教会図書に寄贈されているのでご覧頂きたい。   (中沢譲)