牧師室より

「安保法案成立、14日の週で調整 衆院再可決は見送り」2015/9/3 情報元日本経済新聞ほか)との見出しを、新聞各社が伝えました。衆議院で再可決する「60日ルール」を適用せずに、参議院で強行採決をする決意を政府が固めたという意味です。歴史を画する重要法案を、「60日ルール」の適用で成立させるのは、「立憲主義の否定である」との批判が相次いだことから、このような決断に至ったのだと思われます。どんな形であっても採決を認めませんが、批判の声が無力ではないとも感じました。

 830日、国会前を12万人(主催者発表)の人たちが包囲し、それに呼応する形で、全国各地でも安保法制反対のさまざまな行動がありました。「日本の有権者数は1億人。国会前のデモはそのうちの何パーセントなんだ?こんな人数のデモで国家の意思が決定されるなら、サザンのコンサートで意思決定する方がよほど民主主義だ」と大阪市長がツイッターに書いたそうですがスポーツ報知 831日)、今回の国会包囲行動を上回るような安保法制賛成のデモがあったとは、今のところ聞こえてきません。

今話題になっているSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)という学生有志のグループが、今年53(憲法記念日)に結成されました。現在、安保法制に反対して、毎週金曜日の夕方から国会前でデモを行うことを中心に活動を続けています。そのSEALDsのあるメンバーのスピーチをご紹介します。「安倍首相、二度と戦争をしないと誓ったこの国の憲法は、あなたの独裁を認めはしない。国民主権も、基本的人権の尊重も、平和主義も守れないようであれば、あなたはもはやこの国の総理大臣ではありません。」「民主主義がここに、こうやって生きている限り、わたしたちはあなたを権力の座から引きずり下ろす権利があります。力があります。あなたはこの夏で辞めることになるし、わたしたちは、来年また戦後71年目を無事に迎えることになるでしょう。」このスピーチには、ハッとさせられるものがあります。本当にその通りだと、心揺さぶられるものを感じました。

別のメンバーがインタビューの中で、日本社会で民主主義が機能しない理由について、311での国の対応などを例にあげながら、「個人が責任を引き受けられない社会」を原因の一つとして説明していました。

 民主主義を「未完のプロジェクト」と呼ぶ人がいます。声をあげ続ける人の存在を必要とするからです。民主主義が生き続けるために、その責任を引き受ける努力を怠ってはならないとの思いを強くしました。

資料:『法学セミナー』20159月号SEALDsインタビュー       (中沢譲)