牧師室より

キリストによる和解と平和」

稲正樹氏 平和聖日奨励抜粋

日本国憲法は国の基本的法としてつくられました。その憲法の前文に、「平和に生きる権利」という箇所があります。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と。「われらは」という主語は、「私たち日本国民は」ということです。つまり私たち日本人一人ひとりは、全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免れて平和のうちに生存する権利を持っていることを確認します、ということです。憲法9条と共に、この前文が憲法の平和主義的側面を明らかにしています。

 10数年前に湾岸戦争が起こりました。その時、自衛隊を湾岸地域に出兵させよという要求が外からありました。「軍靴を地上につけよ」と。その時に、憲法の平和主義を擁護しようとした人々に対し、「一国平和主義は、利己主義の平和主義である」という批判が投げかけられました。また最近、日本の為政者によって言われてきた言葉があります。それは「積極的平和主義」という言葉です。しかしこの「積極的平和主義」というのは、軍事的大国になろうということですから、本物の平和主義ではありません。

 「平和に生きる権利」を全世界の国民が有しているという、いわば国際的かつ普遍的人権を憲法は謳っています。全世界の国民に「平和に生きる権利」が実質的に保障されるよう、私たち日本国民は各人において、積極的平和の担い手として、世界平和と地域秩序の安寧のために尽力することが願われているのです。そして私は、この「平和に生きる権利」が、日本国憲法に明記されたことは神様の摂理であり、私たち日本人に与えられた大きな希望のしるしだと考えています。

 北東アジアは、世界で唯一冷戦が終わっていない地域です。そのために安全保障のジレンマにとらわれ、また歴史修正主義が力をふるっています。けれども私たちには、真摯に過去を総括して、隣国の建設的見解に耳を傾ける必要があります。キリストによる和解と平和の道に押し出された私たちには、それぞれが為すべき課題を誠実に果たしていく責任があるのです。私は一憲法研究者ですので、戦争法案を廃案にし、日本国憲法の平和主義を次世代に伝え、平和国家の為すべき道を実現することに尽力いたします。  

最後にいくつかの提案をして終わります。@憲法9条に基づいた外交を行うことを改めて宣言する。A植民地支配の実態を調査して謝罪を行う。B北東アジアの領土問題に関し、武力によらず、外交テーブルでの解決を模索する。C安保条約を日米友好条約に変え、すべての米軍基地を撤去する。D自衛隊を縮小・解体し、災害救助復興支援隊に改組する。E各国の軍拡の背景にあるグローバル企業を規制する。

以上のような政治の実現を提案し、最後にお祈りをさせて頂き、奨励を終えさせて頂きます。   (文責:中沢譲)