牧師室より

 「『マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなることが一番。文化人、民間人が経団連に働き掛けてほしい』。自民党の大西英男衆院議員らの報道圧力発言で浮かび上がったのは、『経団連と自民党』『マスコミと広告』の問題である。なるほど安倍政権と経団連は蜜月だ。……」(『東京新聞』201574日)

 「『正義及び人道の感情と世界の恒久平和を確保する希望』。国際労働機関(ILO)憲章の一節だ。憲章は、困窮と社会不安から戦争に至った反省に立って制定された。労働条件が改悪される恐れの強い労働法制と、戦争に巻き込まれるかもしれない安全保障法制。安倍政権は、二つを同時に進めようとしている。……」(『東京新聞』201579日)

 近頃、新聞やテレビの報道を見るたびに、日本の社会がおかしくなってきていると感じます。日本政府は、旨みの少ない東日本大震災の被災者救援や、福島原発の後始末よりも、東京オリンピックという新しい利権に熱心なように見えます。「新国立競技場」建設をめぐる話は、そのことを象徴する話ではないでしょうか。誰かが「オリンピック」を口実に、税金の無駄遣いの算段をしたのでしょう。この件を聞いて思い出したのが、前任の教会での話です。教会前面の道路は、道幅6メートルくらいの狭い道ですが、役所が「オリンピック道路」として拡張したいので教会の土地を少し売って欲しいと話を持ち込んできました。この教会に赴任する直前のことです。それまで拡張できないでいた都内各地の道路を、一斉に拡張する計画がすすんでいるという話も聞こえてきました。「オリンピック」という錦の御旗があれば、停滞していた道路拡張事業を進められるということなのでしょう。

 与党政治家や官僚の方々は、被災地、沖縄、貧困層などの、小さくされている人たちの声には、いっさい耳を貸さないようですが、経済界の意向にはたいへん敏感なようです。ちなみに、安倍首相の外遊回数は、歴代首相の中でトップなのだそうですが、その外遊には必ず経団連の関係者を同行させていると聞きます。「労働法制」改悪、「安保法制」推進も、経済界の意向を汲んでのこととしか見えません。

先日、新幹線内で焼身自殺をするという痛ましい事件がありました。彼の声をしっかりと受け止められる福祉政策があれば、避けられた事件かもしれないとの思いを、どうしても拭えません。     (中沢譲)