牧師室より

 社会委員会学習会 報告

「世界の宝『日本国憲法第九条』」

125日礼拝後に、伊藤昌太先生(福島大学名誉教授)をお招きしました。

昨年、「ノーベル平和賞」の有力候補にあげられたことで、日本国憲法第九条は、にわかに注目されました。しかしそれだけではなく、近年世界的に九条は評価されており、国際会議もいくつか開催されています。

平和主義の精神については、パリ不戦条約(1928年)の中に、すでに見ることができますが、その精神は、ファシズムの台頭を前に、言葉だけで潰えてしまいました。

第二次大戦後、いちはやく日本の平和憲法(1946年)は誕生しましたが、その成立には奇跡的とも言える条件・状況がありました。

その「条件」とは、天皇の地位を存続し、沖縄をはじめとする米軍の駐留を前提とした九条であったということが言えます。この点では、私たちは沖縄の現実から目をそらして、九条を語ることはできないでしょう。

また「状況」とは、無条件降伏によって軍隊は武装解除され、日本には抵抗勢力が皆無であったことがあります。また天皇が占領軍に協力したということもあるでしょう。すでに国連憲章が定められていた時期でもあり、また平和を望む思いが世界的に高まっていた時期であったこと、早急に憲法を制定したかったマッカーサー(米国)の思惑、米国とソ連の関係がうまくいっていた冷戦前の状況、ということがあげられます。この時期にしか成立することができなかったのが、日本国憲法なのです。  

この憲法には、自由民権運動の影響を受けた鈴木安蔵氏らの意見も盛り込まれており、帝国議会で承認され成立した憲法ですから、「押しつけ憲法」とは言えません。むしろ先進的な人権思想と平和的生存権を盛り込んだ憲法であり、私たちは誇って良いと思います。「冷戦ボケ」から脱却し、21世紀の憲法として世界にアピールしていく必要があると思います。私たちにはその責任があります。

   (文責:中沢譲)