牧師室より

〈聖書の中の女性たち〉その2

 旧新約聖書に登場する女性についての考察です。

ノアの妻:聖書には、「××の妻」という形で登場する、無名の人たちがいます。「ノアの妻」もその一人です。「洪水物語」の登場人物は、ノアと鳩だけだと思われているかもしれませんが、家族の存在もまた、聖書は伝えているのです。ノアは自分の妻に、洪水と箱舟造りについて、どのように説明をしたのでしょうか。夫が舟を造ると聞いて、その大工仕事の腕に不安を覚えなかったのでしょうか。残念ながら家族の思いは分かりません。確かなことは、箱舟が造られ、家族が乗船したことです。箱舟造りを妨害したり、乗船を拒否した家族の存在は記録されていません。ノアの妻は、首をかしげつつも、ノアを助け、神の事業に協力したのだと思います。   

「ノアの妻は夫を支えた立派な妻」だと評価したいのではありません。私たちはノアの妻のように、家族を通して神様の事業に巻き込まれることがあります。その時に、その役割をどのように分かち合うのか、そういう問いを、ノアの妻から見ることも可能ではないでしょうか。

エリサベト:夫のザカリアは祭司で、二人とも年老いて子どもがいませんでした。ある時、「男の子を産む」という預言を天使から聞きます。そして夫は、子どもが誕生するまでしゃべることができなくなります。その後、同様な経験をしたマリアが訪ねて来て、彼女は神様の業の不思議さをあらためて知らされます。そして神様に感謝しつつヨハネ誕生の準備を整えたのではないでしょうか。

 時に私たちは、人生を大きく変える出来事に直面します。将来を知ることのできない私たちは、心を騒がせることもあるでしょう。しかし努力することはできても、未来を変える術を私たちは持ちません。それゆえに私たちは、すべてを神様に委ねるしかないのです。そのためには、すべてを受け入れる信仰が必要になります。        (中沢譲)