牧師室より

N.T姉の義弟さんは『アララギ』の歌人で、筆名を〈松宮静雄〉氏と言われる。昨年の12月、歌集 『病勢転変』を上梓された。N姉からいただき、感銘をもって読んだ。

松宮氏は、養護学校の教師をされていたが、変形性脊髄症という病を負い、歩行が困難になり、自宅で介護を受けながら生活をしている。病は、痛みを伴い、大変な苦しみの中から歌を紡ぎ出している。

「亡き母が病みてうめきし時のごと今われ叫ぶ痛し痛しと」 「急激に来たる痛みは腰上より両脇腹をグワと締め付く」 「身をベッドに横たふるとき腰おそふ痛み鋭し大声をあぐ」。

 松宮氏は1926年生まれであるから、奥様もご高齢であろう。本人はもとより、看病する奥様の苦労も多い。「病む我の介護に家事のいや増すに負担は重し腰いたむ妻」と歌っている。また、お元気であったご次男を亡くされている。「スポーツで鍛へし吾子よ 何に疾く逝くか 老い病むわれを残して」 「介護(ケア)つきの歩行練習−経路延ばし 吾は亡き子の部屋に入り行く」。

 日々、苦しみの中にあるが、時代を鋭く見つめている。「足萎えの老となれども平和憲法まもる思ひは吾ゆるぎなし」 「『日米に密約なし』と何十年言ひ来ぬ歴代自民政権」 「戦争をなし得る国に変へむとはゆゆし恐ろし 鬼か 首相は」。

歌を詠むことが慰めになり、生きる力を生み出しているのではないかと推察する。