牧師室より

クリスマスおめでとうございます。

マタイによる福音書とルカによる福音書が伝えるイエス・キリストのご降誕の記述は、ナザレのイエスを主キリストと信じる著者たちの信仰告白が生み出した壮大な神話的表現である。その表現は圧倒的な筆力をもって、私たちに迫ってくる。旧約聖書からの引用、当時の宗教的、社会的、政治的事情を踏まえて、イエス・キリストのご降誕に神の人間への愛と救いがあり、イエス・キリストは誰であるかを伝えている。

 マタイによる福音書は、東の占星術の学者たちのキリスト礼拝(クリスマス)を記し、ナザレのイエスは世界の王であると告げている。しかし、その王は、領主ヘロデに殺される側にある無力な王である。イエスの無力さは十字架で頂点に達するが、十字架の死(敗北)に神と和解する(インマヌエル)人間の救いがあると逆説的な真理を記している。

 ルカによる福音書は、居場所を見つけられず家畜小屋で、神の子イエスは生を受け、罪人として蔑まれていた羊飼いたちが、最初のクリスマスを祝う栄誉に与った、と告げている。貧しさと暗黒が、神の輝かしい栄光の場に変えられるクリスマスの逆説的な秘儀を記している。

 『愛はおそれない』を著した韓明淑・朴聖焌夫妻は韓国の軍政時代に反権力闘争に関係したという理由で投獄され、苦しみ抜く。妻の明淑は、獄中でクリスマスを迎え、下記のように書いている。「社会と隔離されたこちらの人たちの心の中は悲しみばかりです。でも私は、監獄の中で、心の貧しい人たちとクリスマスを迎えることは、『本当のクリスマス』を迎えるようで、かえってうれしくて心がときめくほどです。そしてイエスがこの世にお生まれになったクリスマスの本当の意味を悟ることができそうです」。

ご降誕の記述は、苦しみ悲しむ人々に、どれほど大きな喜びと希望を与えてきたことか。