◇牧師室より◇
黒人差別に命を賭して闘ったマーティン・ルーサー・キング牧師は1968年4月3日にメンフィスで講演している。その中で「神は私に山に登ることをお許しになりました。私は辺りを見回しました。そして約束の地を見てきました。私はみなさんと一緒にはそこへ行けないかも知れません」と語っている。この演説は、モーセがピスガの山頂から、約束の地・カナンを見せられ、神から「あなたはしかし、そこに渡っていくことはできない」と告げられたシーンで、モーセとご自分をダブらせて、語っている。そして、翌日の4日に、暗殺され、約束の地に入ることなく、命を終えている。
キング牧師が見たという約束の地は、バラク・オバマ氏という最初の黒人大統領の誕生によって、第一歩を踏み出したと、期待された。
オバマ大統領は、プラハで世界から核兵器を廃絶しようと歴史的な演説を行い、ノーベル平和賞を得た。しかし、それ以後のオバマ大統領は、米国の政治政策を変えることなく、更に、硬直化してきたと、私は失望し続けている。核の問題で言うなら、臨界前核実験は繰り返され、核兵器の威力保持に懸命である。米国の核政策の一端を日本に担わせるため、原発を推進させている。
米国は、国際司法裁判所に加盟しない。地雷、核兵器の不使用条約にも署名しない。大量破壊兵器保持という誤報に惑わされ、イラク攻撃をしたが、敗退せざるを得なかった。アフガニスタン攻撃では、無機的な無人飛行機による爆撃で、多くの無辜の人々を殺傷している。イスラム世界での米国への不信感は深まるばかりである。諜報システムを用いて、世界の要人たちの電話やメールを盗聴している破廉恥が暴露された。戦争費用がかさみ、TPPで利益を確保しようと必死である。「王様は裸だ」と叫んだ子どもの真っ直ぐに見る純真な目から見れば、米国こそ「ならず者国家」である。オバマ政権では、キング牧師が仰ぎ望んだ神が約束する差別を乗り越えた「共生」の地に辿り着くことはできない
中国も、内では国民の不満を力で抑え込み、外では覇権主義を振りかざしている。大国と言われる国々の高慢が世界を不安定にしている。戦争しなければ経済が立ち行かない米国に無批判に追従することは、日本と世界の将来に益をもたらさない。