牧師室より

一票の格差が、最大で2.43倍になった先の衆議院選挙に対し、いくつもの弁護士グループが「法の下の平等」を求めて、選挙無効(やり直し)の訴訟を起こしていた。

一票の格差は、何年も前から問題にされていた。今までは「違憲状態」であるが、「選挙無効」とまでは言えないという判決が続いてきた。今回は「状態」という言葉を抜いて「違憲」という判決が多い。その中で、広島高裁の筏津順子裁判長は「違憲で無効」という判決を出した。続いて、広島高裁岡山支部で、片野悟好裁判長も、同じ「無効」判決を出した。「無効」の判決は、初めてで、画期的な判決である。

国会は、違憲状態という判決を受けつつも、是正してこなかった。自分たちの地位に関わり、党利党略もあって、議論は噛み合わず、進展しなかった。また、最近の裁判は行政追認と見られる判決が多く、国会は司法を軽くみていたのではないか。二人の裁判長は司法の気概を示し、ガツンと頭をたたく判決を出した。

この問題は、立法と司法のいざこざではない。国の主権者は国民にあるという民主主義の根幹に関わる問題である。国民主権の回復を宣言するような判決を聞いて、主権を行使する国民になることが促されていると心に留めるべきである。

「主権」という言葉に関して、安倍晋三首相は、サンフランシスコ講和条約が締結された「428日」を「主権回復の日」として式典を行うと言明している。当時、沖縄と奄美と小笠原が排除され、沖縄は「屈辱の日」としている。元外務省・国際情報局長の孫崎亨氏が著した『戦後史の正体』では、428以降、日本は米国の圧力に翻弄される政権運営であったと分析している。主権回復を言うなら、米国の言いなりにならず、主権を持つ国として、真に自立することではないか。