牧師室より

預言者イザヤは「お前たちは、立ち帰って 静かにしているならば救われる。安らかに信頼していることにこそ力がある」と語っています。この言葉が彼の信仰の核心です。イザヤは、紀元前8世紀、南ユダのエルサレムで、宮廷預言者として、40年以上活躍しています。格調高く、真っ直ぐに語る威厳ある預言者でした。有名な「彼らは剣を打ち直して鋤とし 槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず もはや戦うことを学ばない」という御言葉もイザヤの言葉です。この平和宣言は、弱肉強食の戦乱に明け暮れていた時代を映し出しています。

イザヤは二度、国家存亡の戦争を体験しています。一度は、シリア・エフライム戦争でした。同胞であったエフライム(北イスラエル)の王と隣国のアラムの王が連合して南ユダに侵攻してきました。イザヤは「落ち着いて、静かにしていなさい。恐れることはない」と「インマヌエル預言」をします。連合軍はアッシリア軍の攻撃を受け、敗退します。

もう一つは、エルサレムがアッシリアの大軍に包囲された出来事でした。南ユダのヒゼキヤ王は生きた心地がせず、エルサレムの住民も絶望的になります。イザヤは静かに、「エルサレムから、残った者が シオンの山から、難を免れた者が現れ出る。万軍の主の熱情がこれを成就される。…この都に入城することはない。…わたしはこの都を守り抜いて救う」と語ります。翌朝、主の御使いによって、アッシリアの十八万五千人の兵士が全滅します。疫病が蔓延したのでしょう。滅亡を免れます。

イザヤは、国家滅亡の危機にあっても「静かにしているならば救われる。安らかに信頼していることにこそ力がある」と語り、信仰に生きる者の毅然とした姿を現しています。今日も、不安と恐れの多い時代です。イザヤのように、静かに安らかに信頼している信仰は真の力と救いではないでしょうか。十字架を前にした主イエスの神に委ねた深い沈黙と揺るがぬ姿勢を想い浮かべます。