牧師室より

「〔家族生活における個人の尊厳と両性の平等〕婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。A 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」

 上記の条文は、日本国憲法の「男女平等」を謳った第24条である。この草案作成に連合国軍総司令部(GHQ)の人権委員会の一員として22のベアテ・シロタ・ゴードンさんが直接携わった。彼女は昨年の暮れに、89歳で亡くなられた。

 1929年にピアニストであった父親と共に来日し、幼少期を日本で過ごし、当時の軍部の横暴と日本社会の封建制を見聞きした。進学のため渡米したが、戦後、在日していた両親に会うため、GHQの民間職員として再来日した。そして、憲法草案では、法の下での平等や婚姻における両性の平等につながる内容を起案した。日本語が堪能だったので、日本側とGHQの間の通訳もした。22歳の若い彼女は、幼少期に見た日本社会の変革を望み、男女平等への主張を強く打ち出したのではないか。良い時を得て、有用な条文を残してくれたと感謝である。

 彼女は、憲法施行の年に離日したが、幾度も来日し、多くの講演をしている。私は、書かれた講演を読んだことがある。謙遜で、控え目な方であると思ったが、日本に対する深い愛は大きく伝わった。

召される直前まで、「女性の権利」と「平和」を気にかけていたという。

教会の婦人会の方々のお話から、家庭における女性の地位の向上はかなり進んだと受け取れる。しかし、社会への女性の進出は遅れ、賃金格差も大きく、男女の平等度は、135カ国中、101位とされている。

 今回の衆議院総選挙で、憲法改正論者が大幅に増えた。彼女は「日本の憲法はアメリカより素晴らしい。憲法9条は世界にとってのモデルで、後戻りしたら、大きな損失」と言っている。ベアテさんの希望を受け継いでいきたいと願う。