牧師室より

16日(日)に行われた衆院総選挙の結果には落胆した。政治家たちは劣化し、政治状況は溶解しているように見える。「民主党」は政権交代を勝ち取り、大きな期待を託された。しかし、寄せ集めの党であったため、党内が掌握できず、分裂が絶えなかった。そして、マニフェストを実行できなかった。国民はレッドカードを突きつけ、4分の1に激減した。

第三極と騒がれて発足した「維新の会」は50議席を超えた。しかし、石原慎太郎氏と橋下徹氏は、いずれ分裂するのではないか。卒原発を訴えた「未来の党」は全く伸びなかった。小沢一郎氏が率いる「国民の生活が第一」が合流したが、小沢軍団の完敗であった。「公明党」と「みんなの党」が善戦した。老舗の「共産党」「社民党」は消え入りそうである。「新党大地」は1議席になった。これらの政党は、せいぜい50議席、それ以下の弱小政党である。二大政党は夢の話で、一大与党と八つの中小の野党群になった。

政権を奪還した「自民党」は300近い議席を獲得し、一人勝ちの完勝と言えよう。しかし、消去法で残った「自民党」に仕方なく投票したのではないか。政治の退廃に辟易し、投票したい党がない。投票率も60%に満たず、戦後最低であった。

選挙の争点が明確でなかった。多くの国民は「景気対策」を第一にあげていた。生活の困窮が蔓延しているからである。私は「原発」と「憲法」問題であると思っていた。

社会が閉塞的な状況になると、右翼の政治勢力が大きく伸びる。そのような状況になってきた。憲法改正、防衛軍、集団的自衛権、更に核保有によって国際的な発言権を得ようという、かつては言えなかったような言葉が堂々と発せられている。

憲法の根本的な意味は権力者の権力行使に歯止めをかけることにある。それが、容易に権力を行使できるようにすることが、日本再生になるという論調になってきている。

偏狭なナショナリズムが台頭し、アジア諸国の緊張を高めるようなことはしない。そして、後世の人を苦しめる核のゴミを堆積していく原発は何としても止めてほしいと願う。

政治は本来、国民の命と共生と平和を守るという理想を追い求めることではなかったか。