牧師室より

今年の特別伝道集会は平山正実先生をお招きした。講演は「現代社会と苦難−ヨブ記から学ぶ−」と題して話された。現代を覆う苦難は、二千五百年前に書かれたヨブの苦難と類似している。ヨブは、自然災害、人災、略奪者の侵入、配偶者の無理解、更に自分自身が疾病に罹患する。あらゆる苦難に見舞われる。三人の友人が来て「罪のない人が滅ぼされ、正しい人が絶たれることがあろうか」と因果応報、勧善懲悪を説く。しかし、ヨブは、そのような原理主義、教条主義に納得できない。苦悩の末、「執り成し」においてしか救いがないと悟る。執り成しは、神の正義と愛の葛藤の中で生まれる。ヨブは、執り成し、贖う方を渇望する。苦難は、誰かが、執り成し、贖ってくれるところで、初めて乗り越えられる。人が負う苦難に対し、互いに執り成し、贖っていくような関係にある時、神の業に参与できるのではないか。主イエスの十字架の贖いを深く示唆する講演であった。

礼拝説教は「心の病と信仰」と題して、Uコリント710「神の御心に適った悲しみは、取り消されることのない救いに通じる悔い改めを生じさせ、世の悲しみは死をもたらします」のみ言葉から話された。老いや死や離別などによって、持っていた価値観が崩され、危機に追い込まれる。しかし、その危機から、新しい精神的、超越的価値を見出し、愛や真実や正義や平和の意味に気づかされる。ネガティブからポジティブへの価値の転換がある。トルストイの小説『イワン・イリイチの死』と黒澤明の映画『生きる』から、価値の転換を体験し、それを生きた事例として説かれた。

死をもたらす世の悲しみから、神の御心に適う悲しみへの転換は、容易なことではないが、人の人とのつながりの中で、そして、信仰によって神が備えてくださる恵みを知ることができると、励まされるみ言葉をいただいた。