牧師室より

Y.N兄は、残された人生をタイのエイズ孤児に捧げたいと、経営する会社をたたんで、59歳の誕生日にタイに永住すると言って飛び立たれた。イエス・キリストの「これらの小さな者が一人でも滅びることは、あなたがたの天の父の御心ではない」という御言葉に押し出されたからである。バンコクに、百人のエイズ孤児を養育する「ハッピーホーム」をわずかの年月で完成させた。Y兄の身を捨てた行動に、多くの人が感動し協力を惜しまなかった。

その後、Y兄は北のチェンマィに居を移し、2004年に「さんたの家」を開園し、親の保護を受けられない子どもたちの養育、貧困家庭と山岳民族の奨学、生活支援に愛情を込め、精力的に取り組んできた。マスコミからも諸々の取材を受け、「熱帯のサンタクロース」と題してテレビで、全国放映もされ、大きな評価を受けてきた。

ところが、この数年でタイの経済は大きく成長し、高校卒業までは教育費は無料となり、医療費も無償になった。日本よりはるかに進んでいる。Yさんの「本当はこのような施設は無くなったほうがいいのです。子ども達は、血のつながった家族の中で、暮らすことが一番幸せなんです。早くそういう豊かな世の中となるように願っています」という言葉の通りになった。Yさんは、全国の人々からの貴重な献金を用いて、救済支援を必要とする状況ではなくなったと判断し、来3月に「さんたの家」の休園を決意された。

苦しむ人を受けとめる感性と決断力のあるY兄ならではのご活躍だった。12年間の労苦に心から敬意を表し、「本当にご苦労さまでした」と申し上げたい。何百人の人々が助けられたでしょうか。今後は、関係を持った人々を見守る仕事に変わるでしょう。教会の有志で、支援活動をしてきた「タイ・さんたの家と共に歩む会」も閉じることになる。