◇牧師室より

 月刊誌『世界』6月号に、二人の仏教者のことが掲載されている。

 ノンフィクションライターの田中伸尚氏は「未完の戦時下抵抗」を連載している。真宗大谷派明泉寺の元住職・竹中彰元師は、壮年期、学識ある高僧として各地を回って布教し、高い評価を受けていた。しかし、戦争批判の言動をしたため、法話、法事にも呼ばれず、最晩年には、逮捕され、有罪判決を受けている。

 親鸞の教えを受け継ぐ真宗大谷派は「神祗不拝、国王不礼(他宗教を礼拝せず、天皇を拝まない)」を核心的な教義としていた。ところが、真宗大谷派の法主が明治神宮や靖国神社を参拝した。竹中師にとっては、あり得ないことで、批判した。更に戦争に対し、「人馬の生命を奪い、国家の金を費やす。仏教では無益な殺生は罪悪です。戦わんがために戦うということは罪悪であり、侵略です」と語り続けた。その時「彼我の人命も損なう」と語っている。日本人と中国人の命を同等に見ている。

 敗戦から2ヶ月後の1945年10月12日に、枯れ木が朽ちるようにひっそりと老死を迎えたという。

 もう一人は、現在、臨済宗妙心寺派の管長をしている河野太通師である。「仏教者として発言しなければ」と原発に対してインタビューに答えている。妙心寺派は「脱原発」の声明を出しており、その後、全日仏も宣言を出した。それに対し「気付いた者が勇気をもって言わなければならないと言っています。正しいことだと思っていても、周囲の目をうかがって、沈黙しているうちに戦争へ流れていった、かつてとの共通点を思うのです」と語っている。戦争中、仏教教団も戦争に積極的に加担し、檀信徒からお金を集めて戦闘機を「献納」している。過去の過ちを懺悔表明しなければならないとする考えが心の底にあるからである。

 「原発は仏の道とはあいいれない」と下記のように語っている。「生命の尊厳と人権の尊重という仏の教えの基本理念を、仏の道に入る若者はしっかり腹に据えてほしい。何より勇気をもって発言と行動をしてほしい。」二人の仏教者の生き方と発言に勇気づけられる。

日本基督教団議長も「脱原発」の声明を出している。宗教者は「命」に対する畏怖の念で共通する。他宗教者と「宗教者九条の和」で連帯しているように、「脱原発」も連帯していきたいと思う。