牧師室よ

田中 聡・沖縄防衛局長(当時)は、居酒屋での発言によって、更迭された。辺野古への米軍飛行場移設に向けた環境影響評価書の提出について問われた時、田中局長は「犯す前にこれから犯すと言いますか−」と、女性への性暴力に例えて答えたという。米兵による沖縄の女性たちの性暴力被害は、表に現れているのは限られており、泣き寝入りした人はどれくらいいるだろうか。それを知ってか、性暴力表現で答える神経が理解できない。沖縄県民でなくても、怒り心頭である。

一川保夫防衛大臣も参議院で問責決議案が可決された。一川防衛大臣の失言もしばしばあった。失言や暴言を繰り返す人を要職につけることが、今の日本の政治的状況である。勉強ができ、良い大学に行き、出世した。しかし、人間の苦悩や悲しみは全く理解できないような人が国を動かしている。

朝日新聞の「記者有論」に、那覇総局長の谷津憲郎氏が「問題なのは言葉だけか」と題して寄稿している。谷津氏は、田中発言を聞いていたら自分は記事にしたか、また、同僚から報告を受けたら「書け」と指示したか。たぶん、記事にしなかったと告白せざるを得ないと率直に述べている。ジャーナリストたちも言葉を奪われている。

しかし後半で、谷津氏は下記のように手厳しく批判している。県内移設を拒む沖縄県民に、政府は「理解を得て」と言いながら是非を許さず、金を出すからとなだめ、最後は力づくで計画を進めている。田中発言は下劣な例えだが、もっと下劣なのは現実の方だ。更に、トップは「心よりおわび申しあげる」と言いながら、外務・防衛省は米国に約束は履行すると表明している。彼らは、酒に酔ってもいないのに「それでも犯し続ける」と言っているのに等しい、と。

沖縄の基地問題や東日本で起こった複合災害の問題に対し、政治家たちは苦しんでいる国民には目を向けず、政権維持と党利党略のことしか考えていないように思える。