◇牧師室より◇
O.I兄が99年の生涯を全うし、天に帰られた。大学を卒業して明治精糖に入社し、定年まで勤められた。能力と真面目さを買われて、江崎グリコで働き、また、国交がなかったキューバ政府の要請を受け、牛乳会社を立ち上げた。更に、ご自分で特許を取った換気扇会社を作られた。戦前、戦中、戦後を逞しく、力を尽くして生きてこられた。
教会へは不思議な導きで見えるようになり、すぐに受洗を望み、94歳で洗礼を受けられた。私が授洗した最高齢者で、信仰には年齢はないと知らされ、感激の洗礼式を行った。礼拝に出席することを何よりの喜びとしておられた。先祖が、隠れキリシタンで、先祖の宗教に戻れたことが嬉しかったようであった。
95歳の時、癌の手術を受けられた。ご家族は高齢であることを心配された。医者は可能だと言うので、私は強力に手術を受けることを勧めた。見事に乗り切られた。手術後に「食事が喉を通らなかったので、一か八かの決断でした」と言われたが、その気力、体力に感嘆した。やがて、美味しく食事ができるようになられ、一度、ラーメンを食べにご一緒した。
ここ2、3年、老夫婦だけで生活することが不安になり、ホームに入居された。お訪ねした時は、いつも大喜びされ、楽しい会話が弾んだ。毎日欠かさず新聞を読み、体を動かす鍛錬を怠らなかった。そして、優しい人柄が皆さんから愛された。
O兄は召される時まで、節度を守られ、穏和に、そして誠実であられた。教会員からも愛され、楽しい交わりが与えられた。奥さんの倫さんは「幸せな人生でした」と言われる。全く同感である。