◇牧師室より◇
K.S兄が96年の生涯を終えて天に帰られた。教会員である奥様のS姉とご夫妻で、行き届いたケアをする「ホーム」に入居されていた。私は、S姉を訪ねる目的で訪問したが、S兄と親しく話すようになった。ある時「教会で葬式をしてもらいたい」と言われた。「いいですよ。いたします」とお答えした。後になって、S兄は洗礼を望んでいるのではないかと思い、尋ねてみた。すると「そうだ。教会で葬式をするのだから、洗礼を受けることは当然だ」と言われた。S兄は、昔風の男性で自分の思いを貫かれる方で、それが、周りに戸惑いを与えたこともあったらしい。しかし、筋を通して、洗礼を受けてから葬式をすることを望まれた。ホームで感動的な洗礼式をした。その時、S兄は95歳であった。私が洗礼を授けた最高齢者である。
受洗希望は、神に委ねて召されたいというご自分の信仰であった。同時に、S姉のどんな時にも平安に生きる姿を見て、妻の信じる神を受け入れ、同じ信仰に立ちたいという妻への信頼と愛を表すものであった。そして、最期はご家族から「お父さん、ありがとう」と感謝の言葉を聞きながら、篤い看病を受けて、平安に召されて逝かれた。