◇牧師室より◇
私は「チャイルドライン」を全く知らなかった。18歳までの子どもが無料でかけられる専用電話で、2008年から統一番号になり、全国のどこからでも繋がるようになっている。年間に229,000件の電話を受けているという。
月刊誌「世界」の8月号は「人間の復興を! 暮らしの復興を!」を特集している。チャイルドライン支援センターの専務理事・事務局長の太田久美氏が「震災を生きる子どもたち チャイルドラインの電話から」を寄稿している。
被災地の子どもたちから、次のような声が寄せられている。「地震、恐かった。津波、もうだめかと思った。いつでもそのことを思い出すとからだが震える。…
家に一人でいるのが怖い。早くお母さん帰ってくれないと。また、揺れている。ほんとうに怖い。なんとかしてほしい。夜も何回も目が覚める。」「自分が助かったことを喜んではいけないと思う。だって亡くなってしまった人もいるのに。」「お父さんの親戚が、被災して家も壊れて、まだおばさんが見つかっていないんだ。お父さんが捜しに行くって言ってるけど、大丈夫かな。きっと食べるものもなくて大変だろうな。」
テレビでは、被災に負けず、笑顔で元気に生活している様子が放映されているが、多くの子どもたちは地震、津波の恐怖心を持ち続けている。
避難所と在宅の子どもたちの間の反目もある。避難所では食べ物はあるが、お風呂や諸々の不便がある。在宅できればお風呂は入れても、食べ物がない。「ただ飯食って」と言われ、逆に、石鹸の匂いをかいで罵倒の声が飛ぶ。幼児ブロック玩具を積み上げて「ガッ」と倒す津波遊びをする。そこで、生き残る役と亡くなる役が演じられる。日常的に「生と死」に向き合っている。被曝から避難した子どもたちは友だちと別れてしまう淋しさがある。更に「うつる」といじめられるという。
大人の不安が子どもたちにそのまま伝わり、子どもたちの心はずたずたにされている。
太田氏は、互いの存在にぬくもりを伝え合う人間のあるべき姿にも接するとも報告している。そして「子どもたちの心を受けとめる大切さが、むしろこれからさらに増していくのではないか。災害による被害の復旧だけでなく、子どもの『心の復興』という視点も忘れてはならないと考える」と優しい言葉で結んでいる。復興までには時間がかかる。痛みを凝視していきたい。そして、痛みから確かな成長を信じたい。