◇牧師室より◇
若者たちが野球やサッカーに熱中する気持ちは理解できる。鍛えあげられた選手たちのスポーツは人を惹きつける。また、将来への希望が持てない鬱積を大歓声で憂さ晴らしできよう。5万人単位での応援は壮観で、連帯感も嬉しいだろう。
私は、人権や平和を求める集会やデモには極力参加している。しかし、5万人を集めるデモは最近、見られない。参加者は高齢者が多く、これからの社会を担う若者が少ないことが残念である。そして、ジャーナリズムが取り上げることも少ない。
朝日新聞のパリ支局長の稲田信司氏が「デモの力 日本の若者も『怒りなさい ! 』」と題してコラムを書いている。スペインでは、既存の組織に属さない若者が政党だけでなく、
経営者団体や大手労組にも異議申し立ての激しい怒りをぶつけている。反ナチス抵抗運動の闘士であったステファン・エセルが書いた小冊子「怒りなさい ! 」の「無関心になるのではなく、怒りをバネに社会参加しよう」という遺言に応えてだそうである。スペイン発の運動はフランス、ギリシャ、ポルトガルへと飛び火し、10月15日に世界一斉の行動を呼びかけている。稲田氏は「日本の『怒れる者たち』の参加も歓迎されるはずだ」と結んでいる。
大江健三郎氏など、9名の文化人が憲法9条を守ろうとメッセージを発信した。これに応答する「9条の会」が全国に7,500も立ち上がり、活動している。「9条の会」のような運動は日本では初めてではないだろうか。政党や組織から動員されたのではなく、自発的に生まれてきた市民運動は注目に値する。
ひとりの市民として、責任ある声と行動を表すことによって民主主義が作られていく。経済優先がもたらした理不尽な歪み、そこで起こった福島原発事故、永田町の茶番劇など、怒りは頂点に達している。おとなしい日本人を返上して、一市民として意志表示をしていきたい。