◇牧師室より◇
9・11の同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディン容疑者が米軍によって殺害された。米空母からアラビア海に水葬されたという。オバマ米大統領は「正義はなされた」と大見得を切って声明した。テロの現場だった世界貿易センター付近では、群集が星条旗を掲げて歓喜の歓声をあげている。
ビンラディン氏は容疑者であって、犯人と確定されてはいない。他国に軍隊を常駐させることは国の主権侵害であると認識することが常識である。米国はパキスタンに軍隊を送り込み、ビンラディン氏を捜索し続けた。ようやく、居場所を突き止め、周到に、罪のない多くの人を巻き添えにして殺害した。無法な殺人ではないか。ビンラディン氏の殺害計画を白人支配に抵抗した酋長「ジェロニモ」と名づけたそうで、米国原住民を虐殺した蛮行は今も続いている。武力を背景にして、有無を言わせぬ人権侵害と戦争拡大は目に余る。
テロ組織は弱体化していると言われている。しかし、米国のやり方に憤慨する人々はテロリストでなくても多いのではないか。ビンラディン氏の殺害によってテロがなくなるとは思えない。軍事力、情報収集力の差が歴然としている時、抑圧への反発はテロという手段を取るだろう。軍事的制圧でテロを押さえ込むのではなく、貧富の格差の是正や、民主的な国際協調政策をとるべきである。
南米は反米的な国家群を形成している。中近東のイスラム国家も、親米独裁政権に対し、民主化を求める動きは日増しに高まっている。これらの動きが世界的に連動し、米国の独善的な姿勢を変えさせていく時、平和が築かれていく。
9・11後に起こした「戦争」で亡くなった人は、9・11の犠牲者の何十倍にもなるだろう。命の重さに格差をつけてはならない。