◇牧師室より◇

月刊誌「世界」の5月号は「東日本大震災・原発災害」を特集している。「がんばろう!」ではなく「生きよう!」をテーマに、40数名の識者が寄稿している。深く捉え、将来を展望する文章に考えさせられた。

地震、津波、原発事故による被災で流浪する人々の苦悩の深さを誰もが共感している。日本列島に住む限り、「想定外」の規模であったとはいえ、地震災害は受け入れざるを得ない。しかし、原発災害は「安全神話」が打ち砕かれた人災であるだけに、識者たちの批判は厳しく鋭い。もちろん、反原発の立場から論じている。そして今回の災害を、戦後の日本のあり方を根本的に変革する機会として捉えようとする論調が多い。災害復興だけでなく、人間復興が求められている。

経済評論家の内橋克人氏は、弱肉強食の自由主義経済に警鐘を鳴らし続けていた。今回も、利益追求一辺倒の原理がもたらす分断、対立、競争に代えて、連帯、参加、協同を原理とする一大転換を訴えている。それを「これだけのおぞましい悲惨を経てなおも過去の慣習のうえに社会再生など可能であろうか」と厳しい語調で書いている。

特別伝道集会に来てくださった宮田光雄先生は「いま人間であること」と題して下記のように書いている。「電力消費の問題一つとってみても、いわゆる豊かさを追い求めるのではなく、たとえ貧しくなろうとも、日常生活の不便さを忍んでも、人間らしく生きるとはどういうことか、真に生きることの意味を、いまこそ深く問いつづけなければなりません。そのことなくしては、《いま人間であること》そのものが成り立たなくなっているのです」。

石原氏の都知事四選には全く失望した。都民の民度の低さを露呈し、震災を機に再出発が可能なのか不安にさせられるが、一人ひとりが心に深く問う時であることに間違いない。

寺島実郎氏は無力感と不安は力への誘惑を生む、「がんばろうニッポン」などのキャンペーンをファシズムの土壌醸成に繋げてはならないと警告している。肝に命じたい。