牧師室よ

 私たちの教会は横浜磯子教会の祈りから出発し、磯子教会は多くの献金をしてくださった。しかし、土地代が高く、磯子教会だけでは担えないので、神奈川教区宣教プロジェクトとして、教区全体に募金を呼びかけた。教区内の半数を越える教会が募金に応じてくださった。それでも不足した分を、横浜上原教会がそっくり補って、土地、建物の所有を確保してくださった。そのような多くの祈りと支援を得て、洋光台港南台伝道所は誕生してきた。

 洋光台港南台伝道所から横浜港南台教会になり、宗教法人格も取得した。その時、横浜上原教会が所有していた土地、建物を港南台教会の所有に移した。費用をかけまいと、妻が手続きをした。法務局の人が「これを、無償で譲渡されるのですか」と驚いて聞いた。百坪の土地を無償譲渡など、考えられないからである。

 私が、洋光台港南台伝道所に赴任して以来、伝道や教会形成に関して他から指導や口出しを受けたことは一度もない。金は出しても口は出さない。教会は互いを信頼して、自主性を尊重し合う関係にあることを本当に嬉しく、頼もしく感謝してきた。

 ところが最近、私たちの日本基督教団では、この美しい信頼関係が崩れているのではないかと思われる状況がある。

教団は17の教区に分かれている。財政的に比較的豊かな教区もあれば、苦しい運営を強いられている教区もある。互いに支援し合おうと「教区活動連帯金」制度を設けている。苦しい状況にある教区の活動を支え、牧師の謝儀互助などに活用されている。この「教区活動連帯金」制度に関して、ある教区は「離脱」する、ある教区は「保留」すると言っているらしい。その理由は「信頼関係のないところでのこの制度には協力できない」という声に押されているとのことである。しかし実態は、自分たちが考え、求める福音理解と教会観が違うので、協力できないと言っているように思える。

「教区活動連帯金」制度からの離脱や保留は苦しい教区活動を停滞させ、牧師の生活保障をできなくさせる。その信頼関係の喪失の方が教団内に深刻な亀裂を生むのではないか。

教団は多様な考え、諸々の立場を容認し、それが新しいエネルギーを生んできた。自分たちの信仰理解と主張をお金で左右しようとするなら、それは、もはやキリストの教会とは言えない。