◇牧師室より◇
A.S姉が77歳の生涯を終えられた。A姉は、ご主人が脳梗塞で右半身が麻痺し、追い討ちをかけるように癌に侵され、余命の短いことを知らされた。気が動転し、プレハブの教会に飛び込んでこられた。以来、熱心に求道し、洗礼を受けられた。
私は病床のご主人に会いたいと思ったが、会う事を拒んでおられた。ある雨の日、会いたいという電話があり、訪ねることができた。ハンドボールの選手であったので体は大きく、いかにも男性的な方であった。帰る時、私は祈った。すると、ご主人は大粒の涙をボロボロと流された。関東学院で学び、キリスト教、祈りを知っておられ、懐かしかったらしい。その涙の中で病気を受け入れ、ご自分の死さえも受容されたと私は思っている。病床洗礼を受けることを望まれ、病室で洗礼式をした。大きな声で「アーメン」と5
〜6回も叫ばれた。そしてその夜、ご家族に遺言を語り、召されて逝かれた。Aご夫妻との出会いは本当にドラマチックであった。
悲しみから立ち直るのに時間がかかったが、持ち前の明るさ、積極性を取り戻し、有意義な楽しい教会生活を送られた。ご家族の誰も越えられなかった70歳を過ぎたと喜んでおられたが、その頃から、骨折、眼疾、癌と次々と病気に見舞われた。しかし、常に前向きにタフに闘ってこられた。その姿勢には、訪ねる私たちが励まされた。治療が困難になり、延命措置をしない療養入院をされた。最後は痛みなく、眠るように静かに、望んだ天に帰って逝かれた。