牧師室より

最高裁大法廷は、北海道・砂川市の市有地に空知太(そらちぶと)神社を町内会に無償で利用提供させている市の行為に対し、憲法89条と20条の政教分離原則に反すると違憲判決を出した。憲法89は宗教団体への公の財産の提供を禁止し、20は信教の自由を保障し、国の宗教活動を禁止している。これらの条文に違反するという判決であった。この違憲判決によって、全国に千以上もあると言われている公有地にある宗教施設は整理されることになる。当然なことであるが、最近の嬉しいニュースであった。原告は日本キリスト教会の信徒で、最高裁まで18年間、闘ってきた。その労苦に敬意を表したい。

砂川市は「神社施設の宗教性は薄く、神事は伝統的、習俗的である」と国家神道を支えた「神道は宗教に非ず」を主張したが、退けられた。

大法廷の判決に関わった14名の判事のうち、違憲と判断したのは9名で、一人は「神道非宗教論」に立って合憲、残りの4名も限りなく合憲に近い意見を述べている。

信教の自由と政教分離に関する訴訟を執拗に追いかけているノンフィクションライターの田中伸尚氏は裁判で交わされた諸々の議論を解説し、違憲判決は出たけれども、「個人の精神的自由を保障するために、国家と宗教の完全分離を規定している政教分離原則を緩め、歴史認識が希薄で『痩せた憲法判断』だった」と総括している。国家神道の反省から生まれた政教分離原則は少数者の信教の自由を保障した基本的な人権である。田中氏は「痩せた憲法判断」を豊かにするには市民の多角的な問い続けが必要であると語っている。

政教分離問題で最高裁大法廷まで持ち込まれたのは今まで4件あった。津地鎮祭訴訟、山口自衛官合祀訴訟は合憲とされた。3件目の愛媛玉串支出訴訟と4件目の今回の裁判は違憲とされた。政教分離原則は徐々に浸透しつつあると期待したい。