牧師室より

立花隆氏と佐藤優氏が「ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊」を出版している。立花氏は「田中角栄研究」を出して注目された。そして、多方面に渡って興味深いテーマを執筆し、「知の巨人」と言われている。佐藤優氏は「国家の罠」を出して注目された。「国策捜査」という言葉で自分の置かれた立場を語り、最高裁で有罪判決を受けた。大変な筆力で、本屋には佐藤氏が上梓した諸々の本が平積みされている。多方面の雑誌にも投稿し、「知の怪物」と言われている。

この二人が教養書400冊を上げ、読書について対談している。圧倒された。あらゆるジャンルの古典を読破し、「知」の基礎をしっかり鍛錬している。興味深く感じたことを少し紹介したい。

佐藤氏は「マルクス主義、キリスト教という毒物を解毒する力というのが教養ではないでしょうか」と語っている。聖書は古典だから陳腐な記述もある。それを誤読して、そのまま伝道しているキリスト教会もある。これを正しく読み解く力が真の教養であろう。また、こうも語っている。「神学は虚学だと思うんです。神学から見ると理学も、法学も、文学も、経済学もすべて実学なんです。私は虚学と実学のバランスが取れてはじめて総合知が生まれると思うんです。」虚学と実学を踏まえて総合知を得ると言う。

立花氏も「『原典 ユダの福音書』を読むと、初期キリスト教の原思想状況がわかる」と言っている。外典・偽典を読むと「正典」としての聖書が見えてくる。教養とは表と裏を知って、全体を把握することであろう。

また、立花氏は「実戦」に役立つ14ヶ条をあげている。その中で「注釈を読みとばすな。注釈には、しばしば本文以上の情報が含まれている」と書いている。聖書注解では「注」を、その頁に書いているが、一般書は巻末に書かれていることが多いので読みとばすことが大半である。心したいと示された。

立花氏は読書とインターネットから膨大な情報を収集し、分析、統合して、見事な形で著わしてくれる。ただ、「天皇制下の総理大臣になるくらいは仕方ないとして、純粋な国家のシンボルにだけはなってほしくないですね。天皇制があってよかったですよ」という発言は現状追認史観で、人権意識に欠けるのではないか。

佐藤氏は思想性がある。思想性とは「あなたはどう考えますか、どう生きますか」という問いかけがあるということである。同志社大学の神学部を卒業した佐藤氏は伝道者のようなメッセージを持っている。