牧師室よ

社会委員会で「冬の兵士 良心の告発」というDVDを観る会を持った。ベトナム戦争時に、帰還兵たちが「Winter Soldier」という名称の証言集会を開き、ベトナム戦争の実態を告発し、軍の撤退を要求した。この名称を引き継いで、反戦イラク帰還兵の会(IVAW)が作られ、イラク戦争の実態を証言し、「イラクからの即時無条件撤退」「退役・現役軍人への医療保障」「イラク国民への賠償」の3点を要求する活動を諸々の障害を乗り越えながら続けている。

昨年の3月、公聴会を開催した。岩波書店は公聴会で語られた証言を「冬の兵士 イラク・アフガン 帰還兵が語る戦場の真実」と題して出版している。米兵とその家族たちが人間性を崩壊させる残酷で、痛ましい告白を表明している。軍隊と軍隊が対峙して戦う従来の戦争とは全く違う。交戦規則は守られず、イラク国民を虫けらのように殺害する狂気が告発されている。そして、心を病んだ帰還兵の自殺者が戦場での死者よりも多いことが報告されている。

米国はイラクには大量破壊兵器(毒ガス兵器)がある、テロリスト(タリバン)と関係があるとして攻撃を始めた。その二つとも偽りであった。そこで、フセイン政権を倒してイラクを民主国家に建設すると言い変えた。証言者は「自国の堤防が壊れ、人びとが溺れ、橋が崩壊している時に、イラクで国家を建設するなどという法螺(ほら)話はお断りだ」と語り、「私たちはテロリストと戦っていると教えられました。ところが、本物のテロリストは私だった。そして本当のテロリズムはこの占領だ」と戦場の実感を吐露している。

下記の証言に心を打たれた。「今日、私がここで証言しているのは自分のためだけではなく、社会一般のみなさんに聞いてもらうためだけでもありません。私たちが経験したこと、私たちがやったことを、ここに来て話すことができない、すべての人たちのためです。」目に見える隣人の苦悩にも目を閉ざしてしまうが、証言者は見えない、隠れた人々の痛みに共感することが大切ではないかと、彼らの心と合わせて代弁している。