◇牧師室より◇
H兄が急逝された。18日(日)の夜中、奥さんの弘子さんから電話があった。山梨県の西沢渓谷に二人の友人と沢登りに行ったが、足を滑らし谷に落ち、頭を強く打って亡くなったという。本当に驚き言葉を失った。翌日、実家を訪ねて、事情を聞いた。西沢渓谷は中・上級の登山者が登る沢だそうで、救出も困難であったらしい。翌日ようやく、へリコプターで引き上げられ、病院に運ばれたが、既に亡くなっていた。滑落し、即死されたようだ。
H兄は1983年、プレハブの「洋光台港南台伝道所」時代に洗礼を受けた。文学、哲学青年で悶々と悩みながら求道をしていた。私との出会いを喜び、私を通して受洗を決心したといつも言っていた。
老人福祉の仕事に進まれたが、その思いを、彼が著わした「森と水のノマド」に下記のように書いている。「私が福祉の仕事に導かれたのは絶望の果てであった。世界的な虚栄、傲慢、疎外、虚無、虚偽に満ちた絶望の果てであった。『可愛そうな子よ、お前はやがて静かな絶望のなかに陥るであろう』『絶望は死に至る病』であるところから、神は再び私を呼び寄せられ、蘇らせた。私は再び生かされたのである。私は身体に息を吹き込まれることによって、生まれ変わり生かされたのである。そして私同様神によって息を吹き込まれた全ての弱き者達へ下り立ち、その中で彼らと真実な交わりを持つことによってのみ、再び神を見い出すという、絶望を切り開く、新しい生命の道を生きることは、私には必然的であった。」
H兄の老人福祉に関わる姿勢は上記の文章にあるように、本当に誠実であった。実家近くの葬儀場で前夜式、告別式を行った。前夜式には250人を越える会葬者が見えた。彼の誠実な働きに対し、多くの人が尊敬と信頼を寄せていたことを改めて知った。52歳の若い命であったことを残念に思う。懸命に走りぬけたH兄の生涯を記念していきたい。