牧師室より

「港南台九条の会」の定例会で、「冬の兵士(Winter Soldier) 良心の告発」のDVDを観る機会を得た。大変、衝撃的な告発証言であった。

ベトナム戦争時に、当時の帰還兵たちがWinter Soldier(ウインターソルジャー)という名称の証言集会を開き、ベトナム戦争の実態を告発し、軍の撤退を要求した。これにならい、9・11以降、兵役についていたイラクからの帰還兵たちがイラクでの戦闘体験を証言し、反戦イラク帰還兵の会を結成した。彼らは、イラクからの軍の即時撤退、帰還兵の福祉の実現、イラクへの賠償を要求している。
 「良心の告発」は戦闘モラルの崩壊、銃口の先に見たもの、軍隊という監獄の三章からなっている。戦争も国際条約に基づいて戦闘しなければならないが、イラクでは攻撃してはならない一般市民が標的にされて、無差別に、そして無残に命が奪われている。米国によるベトナム戦争時、また日本の中国侵略時、敵が判別できず、全ての人が敵に思え、農民、市民を無差別に殺戮した。同じことがイラクで繰り広げられている。「動くものは全て撃ち殺せ」とまで命令されている。「バグダッド・バーニング イラク女性の占領下日記」というブログが翻訳出版された。彼女は被害者の立場からイラク人が受けている理不尽な人権侵害を報告している。「良心の告発」は加害者である米兵の証言で、この双方はぴったり重なり合う。特殊な武装集団やテロリストと言われるアルカイダとの戦闘ではなく、一般市民が無残に殺戮されている現状は、当然イラク国民に反米感情と憎悪を深めている。
 米兵はイラク人には明らかに加害者であるが、その米兵も誤った戦争に走った米国政府による被害者でもある。虐殺死体を目の前で触れて、正気を失っていく兵士が出てくるのも当然であろう。心に病を負い、精神的外傷が残る。帰還兵の中での自殺者は戦死者の数を越えるとも言われており、更に社会に適応できずに苦悩している若者は増え続けている。勇気あるイラク帰還兵の証言は戦争の実態を浮き彫りにし、そこで繰り広げられている社会の歪みや心の苦悩を知らせてくれる。

私たちが得ている情報は事実を知らされていないのでないか。殊にイスラム圏で起こっている情報は少ない。6月の社会学習会でこのDVDを観る時を持つ。ぜひご覧ください。