牧師室より

「信徒の友」に、戦後60余年が経ち戦争の記憶が薄れてきたが、戦争中の忘れられない経験を語り継ごうと「戦争の記憶」というシリーズを連載している。2月号は「吉林教会最後の日 『20分以内の立ち退き』命令」と題して寺尾鉄男氏が書いている。寺尾氏とは同じ教会で交わりを持ったことがある。

戦時中、旧満州の吉林市にイギリス人宣教師が住んでいた洋館の邸があった。その建物に「日本基督教団 吉林教会」が入り、礼拝が守られていた。しかし、牧師も徴兵され、無牧になった。そして815日の敗戦を迎えた。寺尾家は父親は亡くなり、母親と小学5年生の鉄男君と就学前の5歳の妹との3人家族であった。牧師夫人から勧められ、教会に同居していた。敗戦後、ソ連軍が進駐してきて、目立っていた建物を貸してほしいという要求から始まり、私的略奪のためピストルを突きつけられて、連日の「訪問」を受けた。そして、一週間も経った頃、「20分以内の立ち退き」が命じられた。母親は外出中で、幼い兄妹は、助言や手助けを受けることなく荷物をまとめ、難民収容所に向かった。どれほど不安で恐ろしかっただろうか。私も就学前であったが、引き揚げ時のソ連兵の恐怖を思い出した。

最後に寺尾氏は下記のように書いている。「関東軍の庇護のもとに生活し、『満州事変』以来の中国侵略の『恩恵』を受けていた。教会ともども、その『存在の罪』を思うのである。そのことを考えると私はこれらの体験を、ただ被害者意識で回顧することのないように心がけている。」