◇牧師室より◇
貧困率は所得の多い人から並べて真ん中くらいの人、中位の人が稼いでいる年収の半分も稼げない人が全労働者の中に何%いるか、で示される。日本は、85年は12.5%だったが、05年は26.9%と、ここ20年間に2倍以上になった。所得税や生活保護費の支給などで再配分した後の数字で比較すると、05年のワースト1は米国で17.1%、日本が14.9%で第2位になる。「日本は一億総中流、平等過ぎる」と言われていたが、この言葉は今や死語になった。
国税庁が今年の9月に民間給与実態総計調査を公表した。給与所得者5543万人の内、年収100万円以下が366万人、100万円〜200万円の人が666万人、年収200万円に満たない人が1000万人を超えている。一方、年収1000万円を超える人は233万人で、一昨年に比べ8万4千人増えている。所得格差は広がっている。
今年の年末は更に深刻な状況である。米国発の金融危機は世界経済を混乱させ、日本においても、まず派遣・期間労働者が職場を失い、社宅も追い出されている。ホームレスが増えるに違いない。犯罪を犯して、刑務所に入ることを希望する人も現れているという。荒んでいく心は、他の人に危害を与えるか、自分自身を痛めつけることに表れるだろう。
ワーキングプアの若者たちの間では「戦争こそが希望」と現在の閉塞感を打ち破るのは戦争しかないと言う者もいる。確かに「貧困大国アメリカ」を著わした堤未果氏は貧しくさせられた若者たちは軍隊に入らざるを得ず、彼らがアフガンやイラクに送られていると報告している。
田母神俊雄前航空幕僚長の日本軍国主義の侵略と植民地支配を正当化する発言が公然と発表された。自衛隊の中に彼の発言を支持する勢力がかなりあると見るべきであろう。その勢力と戦争を期待する若者たちが結びついたら恐ろしいことになる。
憲法の前文には「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と欠乏(貧しさ)が平和を壊すと言っている。また25条は「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と謳っている。
来年は明るい見通しができる年になって欲しいと願う。