◇牧師室より◇
日本の労働者の内、3分の1が非正規雇用の期間、派遣労働者である。企業の合理化のため、彼らの存在が公に認められている。賃金は安く、いつでもリストラされ、ワーキングプアと言われる若者たちは結婚の可能性さえ奪われている状態にある。米国のサブプライムローン問題から発した金融危機は世界に広がり、実体経済に大きな影響を与えている。企業経営が困難になり、真っ先に期間、派遣労働者のリストラが始まって、その数3万人とも言われている。彼らは収入がなくなり、住む所も失っていく。ホームレスにならざるを得ない人が大量に出てくるし、自殺者もあるのではないかと懸念されている。経験したことのない混乱が起こり得る。最近の理解し難い殺人事件は、その予兆ではないか。かつては、労働組合が労働者たちの生活を守る力を持っていたが、今は労組が分断され、企業経営者に要求する力を失っている。時の首相が、経団連に雇用の保障を求めるような、考えられない状況になっている。
米国では53万人が働く場を失っているという。自動車の大手3社が国に税金投入の救済を求めている。民間会社に国の支援がなされるかも知れない。これも考えられない状況である。大手3社は、自分たちの会社が潰れると米国経済が立ち行かなくなると脅しているようでもある。
景気の悪化による経済の低迷は、温暖化の歯止めになるという議論もあろうが、生身の人間が食べていけない状況はやはり深刻な問題である。ホンダは自動車レースの最高峰F1から撤退するという。米自動車会社の3首脳は自家用のジェット機から自社のエコカーに乗り換えて議会の公聴会にくるという笑ってしまうようなパフォーマンスを演じている。
この金融危機を捉え、世界が大規模な軍備縮小を目指したら、どうか。無益で、膨大な軍事予算を削減し、公平な産業を育成することが世界の不況閉塞感を打ち破るのではないか。日本は今、平和憲法を生きる国として軍縮によって新しい世界像を提示すべきである、と私は思う。