◇牧師室より◇

那覇中央教会名誉牧師・金城重明先生をお招きしての神奈川教区主催の「平和集会」に参加できなかった。参加した妻が買ってきた金城先生の「『集団自決』を心に刻んで 一沖縄キリスト者の絶望からの精神史」を読んだ。誠実な人柄に改めて深い感銘を受けた1995年に第一刷が出ているが、2008年の8月に第五刷が発行されている。長く、多くの人に読まれているということで、頷くことができる。

先生は16歳の時、沖縄の渡嘉敷島で「集団自決」に関わっている。強い者が弱い者を殺害し、それから自死しなければならなかった。軍隊から手榴弾を受け取った人はそれで爆死した。持たない人は刃物や石や縄などを用いての殺害であった。315名の村民が残酷な死を遂げた。16歳の少年は強い者であったので、自らの手で家族を殺害した。残されたお兄さんと最期の順番を話し合っているところへ、一人の少年が駆け込んで来て「どうせ死ぬに決まっている。米軍に切り込んで一人でも敵兵を殺してから死のうではないか」と言われた。この言葉によって、死の機会を失い、米兵に捕まった。米兵は聞いていた噂と全く違って、食事を与え、病人を看病する愛の人であった。

敗戦を迎えたが、先生は「集団自決」の阿鼻叫喚の地獄の体験に深い傷を負い続けた。素晴らしいクリスチャンに出会い、聖書を貪り読んだ。下記のように書いている。「キリストの十字架の苦難と私の『集団自決』の苦悩とが重なる信仰体験をした時、真の内的解放が与えられたのであります。それは、キリストが私の苦悩を負ってくださったということなのです。こうして、苦しみから逃げるのではなく、苦しみを見つめ、苦しみと向かい合う時に、真の克服と解放とを経験したのであります。ここから、沖縄戦と『集団自決』の真相を究明するエネルギーをも与えられていきました。」そして、「集団自決」の悲劇をもたらしたのは明治以降、国家が推し進めた、天皇を現人神として絶対忠誠を強要した「皇民化教育」という洗脳、そして、「皇軍」との共生共死の思想が最大の要因であったと述べている。

また、下記のように書いている。「キリスト教思想家、森有正氏は、体験と経験とを区別して、体験が過去化し、過ぎ去ってしまうものであるのに対して、『経験』は未来に向かって開かれたものである、と独自の概念規定を行っております。森氏の思想を援用すれば、私にとっての戦後の課題は、自己の戦争体験をどのように経験化するかということです。」「集団自決」という悲劇的な体験から、平和に生きる未来をひたすらに模索し続ける金城先生の生き方は本当に誠実で、深い感動を与える。

沖縄の歴史はあまりに残酷で、現在もなお、変わらぬ苦悩が続いていることに心が痛む。