◇牧師室より◇
M.L.キング研究会に参加してきた。この会は、キング牧師研究の第一人者である梶原寿先生が会長をし、私の友人の山本将信牧師が事務局をして、数十人の会員で構成されている。毎年夏に研究会を開催している。名は「キング研究会」であるが、招かれる講演者が関心を持っている問題を語り、後は参加者で討論する極めて自由な研究会である。先回、参加した時は、「人間の盾」としてイラクに行った木村公一牧師の講演であった。今回は宋富子氏の「愛するとき奇跡は創られる−在日三代史−」という講演であった。宋氏は、日本とコリアの2,000年に渡る交流の歴史を正確に知り、和解と共生、平和をつくる目的で「高麗博物館」を建てることに尽力し、今は名誉館長をしておられる。
宋氏は自分史を一人芝居でドラマチックに演じておられ、私は二回観たことがある。今回は祖母、母親、自分の三代、日本人から受けた差別の話から始められた。心が萎縮し、虚無感の中で死を求める悲しい体験であった。しかし、牧師たちとの出会い、また聖書の言葉によって「自分と隣人を愛する」愛を知って、失っていた人間の心を取り戻した。愛する時、生きる希望と勇気が与えられる奇跡が起こるという情熱的な証しであった。そして、歴史の真実を知る、加害と被害の実態の真相を知ることの大切さを訴え、「無関心は罪である」と力説された。また、日本の右傾化に対しても敏感に反応し、民主化を共に作り出そうと、熱っぽく話された。在日は、日本が右傾化する時、真っ先に犠牲になることを体験したからである。
私が、日本と朝鮮との悲劇的な関係を知ったのは在日の友人から本を借りて読んだ20歳代後半であった。現代史の教育を受けていなかったことを、その時知った。
自由な討論の場では、日本文化は朝鮮から輸入されたものがいかに多いかを、参加者の体験と学習から色々と報告された。