◇牧師室より◇
名古屋高等裁判所は自衛隊のイラク派兵を憲法9条に違反するという判決を出した。航空自衛隊はイラクの首都バグダッドで多国籍軍の武装兵員を空輸している。これは多国籍軍と一体化した武力行使と見なされ、武力行使を放棄した憲法9条に違反する、また、戦闘地域には行かないとしたイラク特措法にも違反する。小泉前首相は「自衛隊が行く所が非戦闘地域だ」と暴論を吐いていたが、否定された。当然とはいえ、画期的な判決として評価されている。
私はイラク派兵に対し、何らかの反対表明をしたいと思っていたところ、誘いがあったので、参加年会費三千円を出して原告団に加わった。多くの市民が参加した大原告団を擁する裁判になった。メールで詳しい裁判の様子を伝えてくれた。その誠実さに敬服した。憲法違反の判決が出るとは、正直期待していなかった。判決を聞いて、驚き喜んだ。
最近の裁判所は憲法判断を避ける傾向にあり、また行政追認の判決を出していると批判されている。判決を出した青山邦夫裁判長はこの裁判で引退されると聞く。
判決は、原告団が要求した「平和的生存権」についても具体的権利性を認める見解を示した。しかし、原告らの平和的生存権が侵害されていないと損害賠償は認めなかった。また、訴えの利益を欠くと、違憲確認や差し止め請求は不適法だと指摘され、原告の敗訴となった。国側が勝訴したので控訴できない。原告側は「イラク派兵は違憲」という実質的勝訴判決を得た。政府与党は判決に関わりなく、航空自衛隊の活動を続けると言っている。司法権は無視されている。しかし、この判決が有効に働く時が来ると期待できる。
安倍前首相から福田首相に代わり、政局が不安定になったので、憲法改定問題は少し遠のいた感があるが、見えないところで改憲運動は盛んであると伝え聞く。
今回の判決で「9条は生きている」また「9条は戦争の歯止めになり、平和を創り出す」という思いを新たにした。敗戦から63年、日本は幸いにも戦争で殺したり、殺されたりする人はいなかった。9条のお陰である。9条は平和を創り出す「国の宝」、そして戦争を収束させる「世界の宝」になるだろう。