牧師室より

O.S兄が一途な信仰を貫き、88歳の生涯を終えられた。お父さんの喜三平さんは大のキリスト教嫌いであったそうだが、キリスト教に改宗し、熱心なクリスチャンになった。Oさんはお父さんの強い影響を受けて育った。キリスト教主義学校の関西学院中学部に入学し、高校、大学と進み、良い師、良い友に恵まれ、信仰の訓練を受けている。また、神戸平安教会の暖かい交わりの中で、過ごしている。「若木」に「父母に、学校に、教会に捧げる感謝は絶大です」と書いている。旧メソジスト教派の古き、良き時代の伝統をそのまま受け継ぎ、几帳面で、実直な教会生活を送ってこられた。

Oさんの信仰は、パウロが「主おいて常に喜びなさい」と勧めているように、人を喜ばせることを喜ぶ信仰であった。大学で繰り上げ卒業をさせられ、ビルマ戦線に従軍した。戦場の苦闘はあまり語らず、捕虜収容所で人を楽しませた演芸会の話をよくされた。明るく、楽しい交わりを喜び、O家においても「お父さんは我が家の太陽」と言われるほど陽気な方であった。私たちの教会では大好きな讃美歌を大きな声で嬉しそうに歌う姿が心に残っている。

そのOさんは数年前から、昼と夜が逆転し、認知症的な症状を見せるようになり、グループホームに入居された。ご家族はよく訪ね、家庭と同じような環境を作り上げていった。またホームの職員もホーム(家庭)の安らぎを与えるように心配りをしてくれた。Oさんはホームで安心しきっていた。ご家族は毎日、2時間もかけて食事を取らせる労を続けられた。嚥下できなくなった時、点滴による延命措置を取らず、神に命をゆだねられた。最期、神を見ているかのような喜びの顔で召されて逝った。