牧師室より

4年ぶりにクリニックで胃カメラの検査を受け、食道に癌があると告知されたのは915日であった。K病院のM医師に紹介状を書くので、詳しい検査と適正な治療を受けるように指示された。

M医師の診察を受け、間違いなく「食道癌」であると告げられ、患部の写真を示された。私は「手術を受けます」と言ったところ、M医師は「それがベストでしょう」と応じられた。食道癌の手術は背中から切る大きな手術になるらしいが、私はその覚悟を決めた。それから、手術に向かって2週間かけて13 種類もの検査を受けた。精密検査の結果、比較的初期の癌で、内視鏡手術で摘出は可能であろうという報告を聞いた。M医師は「食道は食べ物を胃に送り、胃からの逆流を防ぐ機能があるので残すことのできることはラッキーでした」と言ってくれた。

内視鏡手術とはいえ、全身麻酔で人工呼吸器をつけ、7センチ大に増殖した癌を一枚の布のようにして摘出するのに6時間を要した。集中治療室で目覚めた時、口が利けなかった。手元にサインペンと紙が用意してあった。私はまず「とれた」と書いた。看護士の「後で先生からお話があるでしょうが、きれいに取れました」という答えを聞いた。続いて「なんじ」と書いた。答えを覚えていない。それは、8日(木)の午後3時半に手術室に入り、目覚めたのは、翌9日(金)の朝になっており、私の予想を大きく超えていたからである。三番目に「かんしゃ」と書いた。医師を中心にスタッフが一丸となって治療してくれたことへの思いを伝えた。執刀してくれたのは若くて美人のF医師だった。後で説明を受けた時、「長い手術で疲れました」と言い、また「私にしかできません」と誇らしげに言っておられた。

術後2日くらい熱で苦しかったが、痛みのないことはありがたかった。外側は何でもないが、内側は深く傷ついている重篤な状態なので安静にするように厳しく言われた。それを知らず、階下に新聞を買いに行ったことなどは内緒にしていた。食事のリハビリもゆっくり進められた。日に日に回復していく様が確認できて嬉しかった。

癌の告知、諸々の検査、そして手術と貴重な体験をした。これから、病床を訪ねる時、以前とは違う形で病む人の不安や痛みを理解することができるであろう。9月から始まった癌との戦いの第一ラウンドが終わった。第二ラウンドは摘出した癌の組織検査を踏まえての対応と今後の定期的な検診である。

皆さんの祈りは本当にありがたく、心の大きな支えになった。洪水のように押し寄せる祈りに神さまも「こりゃ、何とかしてやらなきゃ」と憐れみをくださったに違いないと思う。