牧師室より

1965に、神奈川地区の諸教会は東京教区から分かれて「神奈川教区」として独立しました。現在108の教会、伝道所から成り立っています。「教団は教区に仕え、教区は各個教会に仕える」と言われています。教団はピラミッド型の上意下達の組織ではなく、逆ピラミッドで、各個教会をあくまで尊重する群れであるということです。これは教会でも同じことで、役員会は大切な役目を果たしていますが、役員会は一人一人の教会員が生き生きと教会生活をできるように下支えする役目を担っています。これが逆転すると権威主義的な教会になり、生き生きした教会にはならないでしょう。

教団において教会性を持っているのは各個教会と教団で、教区は教会性を持っていません。ですから、教区は基本的には地域の諸教会の連帯を形成し、宣教の業を進めるものです。また、教団の教会性の役目も担っています。たとえば、教師の按手礼、准允の執行、教団総会の議員の選出などを託されています。

教団は「戦責告白」「万博キリスト教館出展」「東京神学大学機動隊導入」「二重教職制」問題などで意見が激しく対立しました。神奈川教区も福音理解をめぐって宣教論、教会観、信仰告白が多様に議論されました。この時、教区は教区形成について真剣な対話を積み重ね「教区形成基本方針」を打ち出しました。この労苦に、後から教区に赴任した者として敬意を表しています。

教区総会では必ず「教区形成基本方針」を読み上げます。前文と本文からなり、教団の歴史を踏まえながら、一口にいって「対話路線」を進めるという方針です。

下記のように謳われています。「我々は既に、この状況の中で時と地域と課題とを共有している。さまざまな理解の相違や対立は存在する。しかし我々は共に集まり、共に祈り、共に語り合い、共に行動することが許されている。我々は対立点を棚上げにしたり、性急に一つの理念・理解・方法論に統一して他を切り捨てないよう努力する。忍耐と関心をもってそれぞれの主張を聞き、謙虚に対話し、自分の立場を相対化できるよう神の助けを祈り求めることによって、合意と一致とを目指すことができると信じる。」

教団は1941年に「宗教団体法」によって、プロテスタント諸教会が合同して成立しました。いわば、ドサクサの中で誕生したのです。様々な問題を積み残してきました。また今日、社会に対する認識は多様です。理解や意見の対立は当然です。しかし、忍耐強く対話を重ね、共に福音宣教に与っていこうというのが教区の基本姿勢です。意見が違うからと言って切り捨てない。それが、主イエスの「共に生きよ」という福音の原理だからです。

最近、「オープンコミュニオン(未受洗者が聖餐に与る)」に関する議論が盛んになっています。教区常置委員会で賛成、反対の両者を招いて話し合いを持ったところ、百名くらいの人が集まり熱心な討論になりました。主イエスの思いを問う福音的な議論を深めることが肝要でしょう。